零戦の振動が本になりました

2015年にスタートいたしました技術講演「零戦の振動」が、この度、本になりました。

このように書物として出版できましたのも、これまで講演会の機会をご提供くださった各企業、団体の皆様、そしてご参加いただいた皆様のおかげです。この場をお借りして改めて感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

「機体編」と「エンジン・プロペラ編」の各講演内容に詳細な記述を追加してA5サイズの単行本にまとめました。(モノクロ全210ページ、ソフトカバー)

零戦の実用化において大きな障壁となった振動問題に着目し、振動に関する基礎的な事柄を交えながら、そのメカニズムを解説した内容となっています。図表やイラストを多数織り込み、技術系の方だけでなく、零戦にご関心をお持ちのすべての方に、その技術史を知っていただけるよう努めました。

機体振動に関しては、フラッタによる空中分解事故の根本的原因に加え、この振動問題をこれまで以上に詳しく調査した結果から新たにわかった事実も併せて網羅しました。また、零戦の機体強度にもスポットライトを当て、これまであまり触れられることのなかった新たな零戦の側面もご紹介しています。

一方、エンジン・プロペラ振動に関しては、レシプロエンジンやプロペラの振動次数成分を数式を使わず、簡単なグラフの重ね書きによって直観的にご理解いただけるように工夫しました。エンジンの2次慣性力による振動問題や2次バランサ(防振装置)の開発がどのように戦局に影響を及ぼしていったのか、その経緯から当時の技術競争の焦点が見えてきます。

発売は7月上旬 >> 9月20日より、アマゾン様サイトにてお取り扱い開始となります。(価格:税別2700円)

もしよろしかったら、是非、ご覧になってみてください。

■本書で扱う技術項目■  

機体振動とエンジン・プロペラ振動のメカニズム
未開拓な技術領域で遭遇した零戦の技術課題 – フラッタ
共振周波数と固有モード
主翼の振動特性(モード解析)
風洞試験模型
弾性主軸
断面2次モーメント
飛行機の強度と耐空類別(耐空性審査要領)
機体の操舵系統(サイドスリップと被弾回避操作)
飛行機の速度(計器指示速度, 較正対気速度, 等価対気速度, 真対気速度)
飛行機の燃費(航続性能と燃料消費率)
飛行機の失速速度・離陸速度・設計運動速度・設計巡航速度・設計急降下速度・超過禁止速度
回転機械の次数成分
プロペラの振動次数
慣性モーメント(イナーシャ)
パラメトリックエクサイテーション(係数励振)
レシプロエンジンの燃焼起振力と慣性起振力
慣性力・慣性偶力の次数計算(直列4気筒, 6気筒, 水平対向4気筒, 星型複列14気筒)
2次振動と2次バランサ
星型複列14気筒エンジンの振動
零戦がもたらした振動技術革新