「技術的なお話」カテゴリーアーカイブ

What’s Nastran?

今日は「Nastran」というソフトウェアのご紹介です。

Nastran(ナストラン)というのは、1960年代にアメリカで誕生した構造解析用ソフトウェアのことで、最初は主としてNasaで使用されることを前提に開発されました。その後民間でも販売されるようになり、今では世界中の製造業で使用されています。

Nastranには同じ名字で違う名前の兄弟がいます。NX NastranやMSC Nastranなど、他にもいくつかあるのですが、この兄弟たち、最初は同じような機能を持って誕生し、その後成長するにつれ独自の機能を有するようになっています。

エアロメカで使用しているのはシーメンスPLMソフトウェア社様のNX Nastranで、このソフトウェア、さすが半世紀の歴史があるだけに、正しいモデル化さえしてあげれば振動・騒音などの構造挙動を極めて精度良くシミュレーションしてくれます。

つまり、Nastranというのは製品の構造を設計するとき、できる限り振動が出ないようにするにはどこにエンジンを搭載するとよさそうか?、十分な強度を持たせるには板厚は何mmにするとよさそうか?、といった設計者の検討事項をいろいろな構造モデルで試すことができるソフトウェアなのです。昔はこれらの検討を手計算で行っていたのですが、今はNastranのおかげでコンピュータ上でより詳しく行えるようになったのです。

このようにすばらしいNastranではあるのですが、正しいモデル化を行うことと、ある程度基礎的な使い方を学ぶことが不可欠で、使っているだけでは、なかなか設計に反映できる結果を得ることができないのも実際のところなのです。そこで登場するのが”NX Nastran トレーニングプログラム”です。

セミナーの様子 / 2016.3.9

このトレーニングプログラムはこれまで多くの方に受講いただいてきましたが、”即仕事に役立つ”というコンセプトでカリキュラムが構成されていますので、開催時間の半分以上が実習となっています。実習によって考え方をマスターしていただくのが狙いです。2015年度は神奈川科学技術アカデミー様主催の技術セミナー「実習で学ぶ振動+強度の解析と設計コース」として開催いただきました。

もしご関心がおありでしたら、是非、この秋に新しいドアを開けてみてはいかがでしょうか。

セミナーの詳細は以下のページをご覧になってみてください。

☆セミナーコンセプトのご紹介記事

Let’s enjoy simulation!

FFT’s Medical Check

1ヶ月ほど前のことですが、振動計測で使用しているFFTが健康診断にいってきました。

”FFTの健康診断”と聞いて疑問に思われる方もいらっしゃることと思いますが、FFTも機械モノ、ということで、計測精度が維持できているか、校正に出したわけです。

結果、何の問題も無く、健康そのものという判定をいただき、よかったです。

これからも大切に使っていきたいと思います。

Thanks, FFT!

Grid & Element

エアロメカでは有限要素法を用いた様々なコンピュータシミュレーションを行っていますが、今日は、その有限要素法についてのご紹介です。

有限要素法とは、Finite Element Methodの和訳です。具体的には、本記事のタイトルにもありますように、GridとElementを用いて構造を表現するシミュレーション手法のことです。Grid(グリッド)は”節点”、Element(エレメント)は”要素”として各々和訳されています。

この節点と要素で構造物を細かく分割したものを”メッシュ”と呼び、メッシュ分割された構造をメッシュモデルと呼んでいます。たとえば、Figure 1のような平板のメッシュモデルはFigure 2のようになります。

plate2_surface
Figure 1. 平板

 

plate2b_mesh
Figure 2. メッシュモデル

 

この平板に力を加えたときの変形量を知りたい場合、メッシュモデルに力を定義して有限要素法ソフトウェア(NX Nastran)で計算すると、Figure 3のような結果が表示されます。

plate2_contour
Figure 3. 変形図

 

Figure 3は板の中央部に力を加えたときの変形図ですが、このようなシンプルなケースでは手計算でもある程度結果を見積もることができます。しかし複雑な構造の場合、たとえば自動車の車体のように3次元形状をしているパネルが何枚も接合された構造では、手計算からその変形状態を求めるのは大変な作業になりますので、有限要素法が極めて有効な手段になります。

有限要素法はいまや製造業では必須の設計ツールといってもよいほど様々な産業分野で広く活用されています。

Flutter Analysis

9月12日(土)に開催させていただきました技術セミナー「零戦の振動」におきまして、お時間の関係で十分にご説明できませんでしたフラッタ解析に関する補足説明を本ブログに掲載させていただきます。

フラッタとは、飛行速度がある速度に達すると主翼や尾翼などの振動が発散して構造破壊に至る現象です。フラッタ解析はその構造破壊がはじまる速度(フラッタ速度)を予測するために行いますが、具体的には主翼や尾翼などの固有モードの減衰がゼロとなる速度を算出します。フラッタ解析に必要な情報は、構造を模擬したシミュレーションモデル(Figure 1)と解析条件(飛行高度など)です。

femodel_wing2
Figure 1. 例:主翼のシミュレーションモデル(有限要素モデル)

これらを用いてフラッタ解析を実施すると、Figure 2に示すような2つのグラフが作成されます。この例では、Mode1、Mode 2という2つの固有モードの構造減衰係数および共振周波数が飛行速度の上昇に伴ってどのように変化するかを表しています。

flutter_plots4
Figure 2. 例:フラッタ解析結果

上側の「速度-減衰 (v-g plot)」からフラッタ速度を判定します。グラフの線が構造減衰係数=0 (または、任意の減衰係数)となる飛行速度がフラッタ速度で、これより速度を上げていくと機体に構造破壊が生じることを意味します。これに対応した共振周波数の変化が下側の「速度-共振周波数(v-ω plot)」です。(ω:「オメガ」と読みます)

ここで登場する構造減衰係数や共振周波数は、モーダル解析(※1)におけるそれとは少し意味合いが異なりますので、以下に補足しておきます。

※1) モーダル解析:構造物の共振周波数や固有モード(振動形態)などを求める解析手法で、モード解析ともいいます。

  1. 構造減衰係数: 構造減衰係数とは、一般的には構造部材や結合部などで発生する減衰のことで、構造によって決まる値です。フラッタ解析の場合、この構造減衰に空気力による減衰を含めた減衰特性を構造減衰係数として定義しています。
  2. 共振周波数: 共振周波数とは、一般的には構造固有の振動数のことで、各固有モードによって決まる値ですが、何らかの力が作用した状態では共振周波数は変化します。フラッタ解析の場合、空気力が作用した状態での共振周波数が算出されます。

以上のように、フラッタ解析結果を見るときには、速度によって変化する空気力(※2)が作用している点にご留意いただくとわかりやすいかと思います。

※2) 空気力は速度の2乗に比例するため、速度が大きくなれば減衰力も大きくなります。減衰力が大きくなるのになぜ振動が発散するのか、ということですが、これには翼の複数の固有モードの位相が関係しています。たとえば、曲げとねじりの2つのモードが存在したとすると、それらの位相によっては振動が減衰する場合とそうでない場合が現れます。つまり、フラッタが発生するには、2つ以上の自由度をもつ振動系であることが条件となります。