「テクニカルコラム」カテゴリーアーカイブ

三相モータ(三相誘導電動機)の振動計測

モータの振動には、ポール数などから決まる次数成分に加え、モータケースに装着される部品の共振も現れるため、起振力周波数を確認する際はそれらを総合的に分析する必要が生じます。

定速実稼働時の振動加速度振動レベル(FFT波形)のみから次数成分の把握が困難な場合にはハンマリングによる共振点のチェックが有効な手段となります。

もし何らかの共振点がモータの次数成分と近接している場合は回転数や共振点を変化させることで振動レベルの低下が予想されるため、様々な運転条件で計測し、その推定の妥当性をチェックします。

振動実験-3 加速度ピックアップ

ハンマリング試験で用いる加速度ピックアップ(加速度センサ)についてご紹介いたします。

ハンマリング試験で計測する共振周波数は、計測対象物が小さくなるほど加速度ピックアップの質量の影響を受けやすくなります。そこで、様々なサイズのピックアップを用意して、対象物に合わせて選定するようにします。

大きく分類すると、Figure 3.1のようなサイズがあり、大きいものだと5.4グラム、小さいものだと、僅か0.2グラムの軽さになります。最近ではケーブル一体型の3軸(XYZ)タイプでも1グラムというものがあり、加速度ピックアップは以前に比べ相当軽量化が進んでいます。かつては2グラムの1軸ピックアップをサイコロ状のアルミ材に3つ接着して3軸ピックアップとして用いていましたが、今日ではそのようなことをする必要もなくなり、計測作業自体大きく省力化されています。

Figure 3.1. 加速度ピックアップの種類

振動実験 – 2 インパルスハンマ

ハンマリング試験で用いるインパルスハンマについてご紹介いたします。

ハンマリング試験でもっとも大切なことは伝達関数(周波数応答波形:Figure 2.1)を精度よく計測することです。

Figure 2.1. 伝達関数

具体的には、供試体の振動を十分励起できる力で加振して、共振点(共振周波数 = 固有振動数において波形がピーク状となる頂点)のゲインがもっとも明瞭に現れる状態でデータの取り込みを行います。このため、供試体の大きさや質量に応じてインパルスハンマ(Figure 2.2)を変えて最適な力で加振し、取り込みレンジを調整します。インパルスハンマは本計測の前に試し打ちを行って選定しますが、取り込みレンジは計測点ごとに都度調整します。これは計測点によって応答レベルが異なるからです。(振動振幅が異なるため)

Figure 2.2. インパルスハンマの種類

供試体全体の振動を励起するには大きなインパルスハンマを用いて大きな力で加振すればよいのですが、小さな供試体を大きなハンマで加振すると供試体自体が剛体変位(バウンドなど)しやすくなり逆に振動の励起が不十分となってしまいます。したがって、供試体が小さくなるほどインパルスハンマも小さなサイズを用いることになるのですが、インパルスハンマが小さくなるほど供試体にヒットした際、2度打ちしやすくなって伝達関数の精度が低下するため注意を要します。これをダブルハンマリングといいますが、ダブルハンマリングとなった場合は一旦データを削除して計測し直します。

振動実験 – 1 共振周波数の計測(ハンマリング)

もし製作された試作機から意図しない振動がでてしまったら?

まずは「共振周波数を疑ってみる」のが解決への近道です。この共振周波数と加振源となるエンジンなどの起振力周波数(回転数)が一致したときに振動が増大します。共振周波数を把握して加振源の周波数(回転数)から離すように構造変更することで多くの振動問題は解決します。

共振周波数(固有振動数)はハンマリング試験によって計測します。ハンマリング試験とはインパルスハンマで構造物を加振して励起された振動を加速度ピックアップで計測する試験ですが、決して大きな力は加えず、ほんのわずかな力で加振します。

そして計測された時刻歴波形(加速度/力)をFFT分析することで周波数応答波形(下のグラフ)が求まります。周波数応答波形のピーク周波数(ゲインが増大する箇所)から共振周波数を把握します。