メッシュモデルの形状誤差
シミュレーションモデルのメッシュサイズは、細かくするほど計算時間が増大するため実務を行う上ではできる限り大きいサイズのメッシュが理想ですが、一方でメッシュサイズを大きくすると離散化誤差と形状誤差が増加していきます。形状誤差というのは、アール形状など部材の細かな形状が再現されていないことによる誤差です。これら誤差が大きくなると伝達関数(周波数応答)の共振ピークが全体的に実測値からずれていきますので、起振力周波数との位置関係が変化してしまいます。たとえば、Fgure 2.1の伝達関数で、仮に起振力周波数が青い縦線の1000 Hzだとすると、シミュレーション(緑=Sim)の曲げ共振=1308 Hzは起振力周波数から十分に離れているため問題無しという予測になります。しかし、実際は実測された曲げ共振は1085 Hz(赤=Test)で起振力周波数に近く、これでは振動が励起されやすくなります。つまり、このシミュレーション結果から構造設計してしまうと、実際に試作機が完成した時点で振動が問題化する可能性が高いことがわかります。したがって、「メッシュサイズ」と併せて「どの程度まで細部形状を表現するか」をあらかじめ現行機など近い構造物で試験・解析しながら取り決める事前検討が必要となります。
CAE解析(振動解析)には「試作~試験~設計変更」の回数を減らす効果がありますが、解析結果が試験結果と一致せず、なかなかその効果を実感できないケースもあると思います。CAEツールの効果的な運用には解析と試験の両輪が望まれます。