「自動車」カテゴリーアーカイブ

振動実験 – 2 インパルスハンマ

ハンマリング試験で用いるインパルスハンマについてご紹介いたします。

ハンマリング試験でもっとも大切なことは伝達関数(周波数応答波形:Figure 2.1)を精度よく計測することです。

Figure 2.1. 伝達関数

具体的には、供試体の振動を十分励起できる力で加振して、共振点(共振周波数 = 固有振動数において波形がピーク状となる頂点)のゲインがもっとも明瞭に現れる状態でデータの取り込みを行います。このため、供試体の大きさや質量に応じてインパルスハンマ(Figure 2.2)を変えて最適な力で加振し、取り込みレンジを調整します。インパルスハンマは本計測の前に試し打ちを行って選定しますが、取り込みレンジは計測点ごとに都度調整します。これは計測点によって応答レベルが異なるからです。(振動振幅が異なるため)

Figure 2.2. インパルスハンマの種類

供試体全体の振動を励起するには大きなインパルスハンマを用いて大きな力で加振すればよいのですが、小さな供試体を大きなハンマで加振すると供試体自体が剛体変位(バウンドなど)しやすくなり逆に振動の励起が不十分となってしまいます。したがって、供試体が小さくなるほどインパルスハンマも小さなサイズを用いることになるのですが、インパルスハンマが小さくなるほど供試体にヒットした際、2度打ちしやすくなって伝達関数の精度が低下するため注意を要します。これをダブルハンマリングといいますが、ダブルハンマリングとなった場合は一旦データを削除して計測し直します。

人とクルマのテクノロジー展2022

先週の金曜日にパシフィコ横浜で開催されました標記展示会に行ってきました。(会期:5月25~27日)

今年は電気自動車関連の展示に加え、素材の新技術に関する展示が比較的多かったように感じました。

中でも特に目を引いたのが、従来の自動車用構造材料を使いつつ、さらに軽量化するための加工技術です。Figure 1は住友重機械工業様のブースで撮影させていただいた自動車のボディサイドパネルで、プレス成型されたスチールチューブが組み込まれています。一見すると普通のパネルASSYのようですが、実はAピラーからルーフサイドレールまでの部材がスチールチューブになっています。

Figure 1. ボディサイドパネル / 住友重機械工業様ブースにて

従来構造がシートメタルをプレスしてスポット溶接するのに対し、Figure 2のようにスポット溶接が不要となるため、高剛性化することができ、結果的に板厚を下げて従来構造比10~20パーセント軽量化されるとのことです。

Figure 2. スチールチューブ成形品 (黒っぽい部分) / 住友重機械工業様ブースにて

個人的には車体の共振周波数を上昇させることにも役立つように思われたため、この技術が広く適用されるようになると、自動車の振動騒音性能や操縦安定性能がこれまで以上に高性能化されていくように感じました。

たとえばアイドル振動というNV性能(NV = Noise & Vibration)は、車体の曲げ・ねじりモードの共振周波数を上昇させてエンジンの起振力周波数から遠ざけるよう設計されますが、車体全体が曲がったりねじれたりするようなグローバルなモードの共振周波数というのは簡単には上昇せず苦労することが少なくありません。振動設計の現場からすれば、大がかりな構造変更や補剛部材を一切追加せずとも共振周波数を予め高周波側に置いておくことができるこの技術は、まるで夢のような設計アイテムですので、是非今後に期待したいと思います。

今回、スチールチューブ成形について詳細な解説をしてくださった住友重機械工業エンジニアの皆様には、この場をお借りして改めて御礼申し上げたいと思います。その節はありがとうございました。

ジャパントラックショー2022

5月12~14日にパシフィコ横浜で開催されたジャパントラックショー2022に行ってきました。

土曜日(14日)ということもあり、ビジネス関係者のみならず、ご家族ずれの方も多く来場されていて盛況でした。

今回は航空貨物を運ぶトレーラを見に行きました。

※画像はすべて平野ロジスティクス様のエリアに展示されていた車両および機材です。

後部にULDの絵が描かれています

航空貨物用ユニットロードデバイス (ULD)は飛行機の胴体形状に合わせて設計されていますが、トレーラ・コンテナにもぴたりと収まるサイズで、どこにも無駄なスペースが無い点に感動を覚えました。

ULDが積み込まれる様子

また、トレーラ・コンテナは2段積み(ダブルデッカー)となっていますが、2段目のフロア構造は部材配置の工夫や随所に開けられた重量軽減孔のピッチなど、今後の仕事の参考になる点が多々ありました。無駄な質量増加を極力避けようとする設計者の思いが伝わってくるようで、大いに勉強になりました。

フロア構造

この他、8リッターの直6ターボディーゼルエンジンやトラック用バランサなども展示されていて、楽しい時間を過ごすことができました。

自動車のこもり音解析(連成解析)

自動車の車室内に存在する空気は車体の共振周波数近傍で圧力変動が増大し、乗り心地を低下させるこもり音(Booming Noise)の原因となります。また、車室内の容積や形状で決まる空洞共鳴周波数が車体の共振種周波数に近接している場合にも圧力変動が大きくなります。


セミモノコック車、フレーム車ともにルーフやフロアといった主要発音パネルの振動低減によりこもり音(圧力変動)を改善させることができますが、多くの場合、質量増大を招いてしまいます。


そこで、セミモノコック車はサブフレームを含めた振動系、フレーム車はフレームを含めた振動系で各々構造と音響(音場)の連成解析(シミュレーション)を行います。これによりトリムアップされただけの車体やキャブのみで行う場合に比べ、質量増大を抑えたより効率的な構造検討が可能となります。

エアロメカでは、自動車のアイドルこもり音やドラミング音をはじめ、各種車室内騒音に関する解析シミュレーション、ならびに構造変更検討による騒音低減構造の算出を承っております。

画像の図はデモンストレーション用モデルによる車室内空洞共鳴のシミュレーション結果です。