振動実験 – 1 共振周波数の計測(ハンマリング)

もし製作された試作機から意図しない振動がでてしまったら?

まずは「共振周波数を疑ってみる」のが解決への近道です。この共振周波数と加振源となるエンジンなどの起振力周波数(回転数)が一致したときに振動が増大します。共振周波数を把握して加振源の周波数(回転数)から離すように構造変更することで多くの振動問題は解決します。

共振周波数(固有振動数)はハンマリング試験によって計測します。ハンマリング試験とはインパルスハンマで構造物を加振して励起された振動を加速度ピックアップで計測する試験ですが、決して大きな力は加えず、ほんのわずかな力で加振します。

そして計測された時刻歴波形(加速度/力)をFFT分析することで周波数応答波形(下のグラフ)が求まります。周波数応答波形のピーク周波数(ゲインが増大する箇所)から共振周波数を把握します。

Femap with NX Nastranによる振動解析トレーニング – セルフラーニング(在宅ワーク)

実際にNastranを使用した演習を通して振動解析の基礎と実務への応用法を学んでいただく講座(在宅トレーニング、セルフラーニング)です。具体的には例題構造について、周波数応答解析により振動レベルを把握し、その振動がなぜ大きいのか、そのメカニズムをノーマルモード解析(共振周波数・固有振動数、固有モード)によって解析します。本プログラムの最大の特徴は「実務で即役立つ」スキルの習得です。振動解析の考え方を学ぶだけでなく、受講者様自身で実際にソフトウェアを動かしながら解析に必要な各種技能、たとえば解析ジョブの実行や解析結果の表示方法などを知っていただけるよう構成されています。

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テキストのまえがきより

「振動解析に関する本を読んでも、いまひとつよくわからない」そうした悩みを持 っている方は決して少なくないのでは 、と思います。いまこ うしてテキストを書いている筆者自身もかつてはそうでした。しかし振動解析をある程度経験すると、その理由が徐々にわかってきました。今振り返ってみると、振動につきものの「周波数」というものを日常生活の中でほとんど考えたことがなかったのが原因だったように思います。「大きな力は大きな変形」、「小さな力は小さな変形」というのは誰もが持っている感覚ですが、「周波数」についてはこのような感覚的な物理量として認識できていなかったように思うのです。ですから、振動解析をはじめ る上でのはじめの一歩としては、まずは振動解析に慣れることだと思います。つまり、「習うより、慣れる」と同じで、体験によって感覚=エンジニアリングセンスを養うのです。本講座はその目的を果たせるよう、シミ ュレーションツールを使って振動解析を体験的に学んでいただけるよう構成しました。とにかくまずはやってみること! これが一番の近道だと思います。

Figure 1.1. 本プログラムで扱う例題モデルの振動シミュレーション結果 / ノーマルモード解析(固有モード解析)
Figure 1.2. 本プログラムで扱う例題モデルの振動シミュレーション結果 / 周波数応答解析 ※例題モデルは随時更新しています。最新の例題モデルではピーク特性が画像とは異なっています。

零戦の振動Ⅱ – エンジン・プロペラ編

先月の10月8日(火)に「零戦の振動Ⅱ – エンジン・プロペラ編」のお話をさせていただきました。

今回は世界有数の自動車関連メーカー様における年次イベントということもあり、いつもにも増して緊張して臨んだのですが、主催社の皆様のきめ細かなご対応のおかげで、すぐに会場の雰囲気になじむことができました。令和初の講演会をこのように終始和やかな雰囲気で終えることができ、まずは主催者様には厚く御礼申し上げたいと思います。その節はありがとうございました。

ご聴講いただいた皆様は、普段、パワープラントの設計・製造に携わっていらっしゃるレシプロエンジンのスペシャリストの方々ということで、もしかすると今回のお話は少したいくつな内容だったかもしれないと危惧していますが、わずかばかりでもこのお話が皆様のお仕事のお役に立てることを願っています。

今回ご紹介させていただいた零戦や雷電のエンジン・プロペラ振動は、突き詰めていけば戦闘機の馬力競争が激しさを増す中で必要性を増していった「防振技術」の遅れが招いたものでした。それは、零戦では全機質量の増加につながり、一方、雷電では一応の振動問題の解決を図れたものの、エンジン起振力を低減できなかったことで最大速度の低下につながりました。このようないきさつは、今日のモノづくりにも少なからず教訓を与えてくれるように思えます。

日本製の自動車用パワープラントは半世紀以上に渡り極限まで低振動・低騒音化され、一見すると、もうこれ以上は手を付けるところがないように見受けられます。しかし、もしかするとまだまだ起振力低減の余地があるかもしれません。個人的には、その起振力に再度スポットライトが当たり、そして誰も想像しなかった新たな技術革新が、この日本から誕生することを期待して止みません。

最後に、今回の講演の実施にあたり、数か月前からご準備くださいました開催スタッフの皆様には、この場をお借りして改めて感謝の意を表したいと思います。そして、つたない話ではありましたが、最後までご聴講くださった皆様、本当にありがとうございました。

零戦の振動が本になりました

2015年にスタートいたしました技術講演「零戦の振動」が、この度、本になりました。

このように書物として出版できましたのも、これまで講演会の機会をご提供くださった各企業、団体の皆様、そしてご参加いただいた皆様のおかげです。この場をお借りして改めて感謝の意を表したいと思います。ありがとうございました。

「機体編」と「エンジン・プロペラ編」の各講演内容に詳細な記述を追加してA5サイズの単行本にまとめました。(モノクロ全210ページ、ソフトカバー)

零戦の実用化において大きな障壁となった振動問題に着目し、振動に関する基礎的な事柄を交えながら、そのメカニズムを解説した内容となっています。図表やイラストを多数織り込み、技術系の方だけでなく、零戦にご関心をお持ちのすべての方に、その技術史を知っていただけるよう努めました。

機体振動に関しては、フラッタによる空中分解事故の根本的原因に加え、この振動問題をこれまで以上に詳しく調査した結果から新たにわかった事実も併せて網羅しました。また、零戦の機体強度にもスポットライトを当て、これまであまり触れられることのなかった新たな零戦の側面もご紹介しています。

一方、エンジン・プロペラ振動に関しては、レシプロエンジンやプロペラの振動次数成分を数式を使わず、簡単なグラフの重ね書きによって直観的にご理解いただけるように工夫しました。エンジンの2次慣性力による振動問題や2次バランサ(防振装置)の開発がどのように戦局に影響を及ぼしていったのか、その経緯から当時の技術競争の焦点が見えてきます。

発売は7月上旬 >> 9月20日より、アマゾン様サイトにてお取り扱い開始となります。(価格:税別2700円)

もしよろしかったら、是非、ご覧になってみてください。

■本書で扱う技術項目■  

機体振動とエンジン・プロペラ振動のメカニズム
未開拓な技術領域で遭遇した零戦の技術課題 – フラッタ
共振周波数と固有モード
主翼の振動特性(モード解析)
風洞試験模型
弾性主軸
断面2次モーメント
飛行機の強度と耐空類別(耐空性審査要領)
機体の操舵系統(サイドスリップと被弾回避操作)
飛行機の速度(計器指示速度, 較正対気速度, 等価対気速度, 真対気速度)
飛行機の燃費(航続性能と燃料消費率)
飛行機の失速速度・離陸速度・設計運動速度・設計巡航速度・設計急降下速度・超過禁止速度
回転機械の次数成分
プロペラの振動次数
慣性モーメント(イナーシャ)
パラメトリックエクサイテーション(係数励振)
レシプロエンジンの燃焼起振力と慣性起振力
慣性力・慣性偶力の次数計算(直列4気筒, 6気筒, 水平対向4気筒, 星型複列14気筒)
2次振動と2次バランサ
星型複列14気筒エンジンの振動
零戦がもたらした振動技術革新