振動実験 – 1 共振周波数の計測(ハンマリング)

もし製作された試作機から意図しない振動がでてしまったら?

まずは「共振周波数を疑ってみる」のが解決への近道です。この共振周波数と加振源となるエンジンなどの起振力周波数(回転数)が一致したときに振動が増大します。共振周波数を把握して加振源の周波数(回転数)から離すように構造変更することで多くの振動問題は解決します。

共振周波数(固有振動数)はハンマリング試験によって計測します。ハンマリング試験とはインパルスハンマで構造物を加振して励起された振動を加速度ピックアップで計測する試験ですが、決して大きな力は加えず、ほんのわずかな力で加振します。

そして計測された時刻歴波形(加速度/力)をFFT分析することで周波数応答波形(下のグラフ)が求まります。周波数応答波形のピーク周波数(ゲインが増大する箇所)から共振周波数を把握します。

人とクルマのテクノロジー展2022

先週の金曜日にパシフィコ横浜で開催されました標記展示会に行ってきました。(会期:5月25~27日)

今年は電気自動車関連の展示に加え、素材の新技術に関する展示が比較的多かったように感じました。

中でも特に目を引いたのが、従来の自動車用構造材料を使いつつ、さらに軽量化するための加工技術です。Figure 1は住友重機械工業様のブースで撮影させていただいた自動車のボディサイドパネルで、プレス成型されたスチールチューブが組み込まれています。一見すると普通のパネルASSYのようですが、実はAピラーからルーフサイドレールまでの部材がスチールチューブになっています。

Figure 1. ボディサイドパネル / 住友重機械工業様ブースにて

従来構造がシートメタルをプレスしてスポット溶接するのに対し、Figure 2のようにスポット溶接が不要となるため、高剛性化することができ、結果的に板厚を下げて従来構造比10~20パーセント軽量化されるとのことです。

Figure 2. スチールチューブ成形品 (黒っぽい部分) / 住友重機械工業様ブースにて

個人的には車体の共振周波数を上昇させることにも役立つように思われたため、この技術が広く適用されるようになると、自動車の振動騒音性能や操縦安定性能がこれまで以上に高性能化されていくように感じました。

たとえばアイドル振動というNV性能(NV = Noise & Vibration)は、車体の曲げ・ねじりモードの共振周波数を上昇させてエンジンの起振力周波数から遠ざけるよう設計されますが、車体全体が曲がったりねじれたりするようなグローバルなモードの共振周波数というのは簡単には上昇せず苦労することが少なくありません。振動設計の現場からすれば、大がかりな構造変更や補剛部材を一切追加せずとも共振周波数を予め高周波側に置いておくことができるこの技術は、まるで夢のような設計アイテムですので、是非今後に期待したいと思います。

今回、スチールチューブ成形について詳細な解説をしてくださった住友重機械工業エンジニアの皆様には、この場をお借りして改めて御礼申し上げたいと思います。その節はありがとうございました。