「テクニカルコラム」カテゴリーアーカイブ

フュエルポンプの低騒音化 – ブラケットの振動シミュレーション(モデルコリレーション)

フュエルポンプ(燃料ポンプ)にインシュレータを装着した場合、ブラケットの大型化やインシュレータ追加による共振周波数の低下が予想されます。そこで、この共振周波数がどの程度低下するかをシミュレーションによって予測することとしました。具体的には、Step 1) 現状構造をモデル化し(ベースモデル)、Step 2) ベースモデルのブラケットを新しいブラケットモデルに差し替えてNX Nastranによるノーマルモード解析(固有値解析)を行いました。本記事ではStep 1)の結果についてリポートいたします。

Figure 3.1はベースモデルの周波数応答解析結果(伝達関数=イナータンス)を実験データと比較したグラフです。横軸が周波数(振動の速さ)、縦軸が加速度/力(振動の大きさ)を表します。実験の18ヘルツ近傍に対し、シミュレーションは23Hz近傍にピークが現れており、約25%共振周波数が高くなっています。

Figure 3.1. 周波数応答(イナータンス) / 実験(Test) vs. シミュレーション(Sim) / 加振点・応答点:Figure 3.2

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Figure 3.2. 加振点=応答点

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ブラケットを取り付ける車体側フランジの塗膜を剥がしたところ、部分的に錆が発生し、それにより板厚が最大で20%ほど低下していることが判明したため、フランジを詳細に計測して算出した平均板厚をモデルに反映し微調整した結果、Figure 3.3のように実機特性を再現することができました。(モデルコリレーション) 着目する18ヘルツ近傍をみると、シミュレーション(Sim)のほうが実験(Test)よりピーキー(鋭い山)になっています。これは実験ではフュエルホースが装着された状態で計測したことで減衰が大きくなるのに対し、シミュレーションではそれがモデル化されていないことによって生じた差異と思われます。また、シミュレーションのマスラインが実験データを再現していませんが、これは、実験が車両状態で行ったものであるのに対し、シミュレーションはフュエルポンプ系のみで行っていることから生じる差異です。(100Hz以上まで検討する場合はこの部分の再現性も考慮します)

Figure 3.3. 周波数応答(イナータンス) / 実験(Test) vs. シミュレーション(Sim) / 加振点・応答点:Figure 3.2

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18ヘルツ近傍のピークは実験ではブラケットの上下曲げ1節(セツ)モードでしたが(Figure 3.4)、シミュレーションも同様な固有モードが現れており(Figure 3.5)、概ねこのモデルをベースモデルとして検討をすすめても問題なさそうであることがわかりました。

Figure 3.4. 実験結果 / 固有モード / 18.5 [Hz] / 上下曲げ1節
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Figure 3.5. シミュレーション結果 / 固有モード / 18.5 [Hz] / 上下曲げ1節

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次回はベースモデルのブラケットを新しいブラケットモデルに差し替えた場合のシミュレーション結果(Step 2)をリポートさせていただく予定ですので、もしよろしければ改めてご訪問いただけましたら幸いです。

フュエルポンプの低騒音化 – モーダル実験(実験モーダル解析)

先日お伝えいたしましたフュエルポンプ(燃料ポンプ)の低騒音化に関する進捗状況をリポートいたします。


今回、フュエルポンプの低騒音化を目的として装着するインシュレータは、ブラケットの大型化およびインシュレータの追加による質量増加を伴うため、フュエルポンプ系共振周波数の低下が予想されます。そこで、今後の参考として現状の共振周波数(=固有振動数、固有値、共振点)および固有モードを実験的に把握しておくことにしました。具体的にはブラケットの振動に着目したモーダル実験(実験モーダル解析)を行いました。


実験はインパクトハンマ(インパルスハンマ)を用い、ブラケット先端を上下方向にハンマリングして伝達関数(イナータンス=加速度/力)を計測しました。その後、計測された伝達関数をカーブフィットして固有モードを抽出しました。計測点は、ポンプ2点、ブラケット4点、車体側フランジ2点の合計8点としました。(Figure 2.1)

Figure 2.1. フュエルポンプ系構造

その結果、1次モードが18.5ヘルツとなり、固有モードはシンプルなブラケットの上下曲げ1節(セツ)であることがわかりました。(Figure 2.2) 本固有モードにはフューエルポンプとブラケットの顕著な相対変位は表れておりませんので、ポンプマウントの剛性は問題なさそうでした。しかし、18.5ヘルツという周波数に関しては少々低いように思われたため、加振点を変更したり、計測条件を変更するなどして計測し直してみましたが、やはり最低次の共振周波数は18.5ヘルツでした。

Figure 2.2. フューエルポンプ系 / 実験結果 / 固有モード / モード 1 = 18.5 [Hz] / 上下曲げ1節

一般的な乗用車は概ね10ヘルツ帯にバネ下など主要コンポーネントの共振点があるため、必ずしも今回の実験対象車両がそのように振動設計されているかは定かではありませんが、念のため、実験供試体のフュエルポンプ近傍を詳しく調べてみました。すると、車体側取り付け部となるフランジの塗膜がはがれ、パネルの合わせ面にわずかながら劣化が見受けられました。パネルの合わせ面のため目視レベルでは明確な確認はできませんでしたが、このあたりがブラケットの支持剛性に関与して共振周波数に影響を及ぼしているように思われましたので、この件に関しては、後日、さらに詳しく調べることにしました。

今回の実験では想定していなかった共振周波数の低さが明らかになったことで、引き続きその原因調査という予定外のプロセスが増えてしましたが、フランジ部の経年劣化の可能性に気付くことができたのはよかったと思っております。

次回はフューエルポンプ系の共振周波数が低い原因を詳しく調べてリポートさせていただく予定ですので、もしよろしければ改めてご訪問いただけましたら幸いです。

フュエルポンプ(燃料ポンプ)の低騒音化

弊社で振動騒音の計測に使用しております車両のフュエルポンプ(燃料ポンプ)の低騒音化について、複数回に分けてご紹介いたします。本フュエルポンプは近年主流のインタンク式とは異なり、アウトタンク式(ガスタンクの外に設置されるタイプ)ということもあり、ポンプ作動時の車室内ノイズレベルが比較的大きく感じられ、かねてから車体パネルの制振や遮音・吸音など、様々な方策を検討していました。そのような中、起振源である本フュエルポンプ専用のインシュレータ(防振ゴム)が販売されていることを知り、早速購入して取り付けてみることにしました。

購入したインシュレータは、Figure 1.1の左側画像のようにフュエルポンプ本体をインシュレータの中に入れて、ポンプマウントでブラケットに固定するようになっています。右側画像のようなリジッドマウントに比べてポンプマウントのボルトスパンが大きいため、それに合わせてブラケットも大きなものを使うようになっています。

Figure 1.1. 左側:インシュレータマウント / 右側:リジッドマウント

騒音低減の効果は近日中にリポートさせていただきたいと思いますので、改めてご訪問いただけましたら幸いです。

モーダルモデル

大規模な有限要素モデルは解析時間の増大など効率的な解析検討の障壁となります。そのような場合、有限要素モデルの規模を縮約する手法が役立ちます。具体的には大規模な有限要素モデルのノーマルモード特性をもとにモーダルモデルを作成することで、計算に数時間を要するモデルであっても数分で計算できるようになります。モーダルモデルは詳細な有限要素モデルを追加結合することができるため、構造変更する部位のみメッシュでモデル化し、その他の変更しない部位をモーダルモデルとすることで、解析時間を大幅に短縮することが可能となります。

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例1)主翼に搭載されるエンジンパイロンの構造検討を行う場合

主翼の詳細FEモデルをモーダルモデル化することで、全体系の計算時間が主としてエンジンパイロンのみを計算した場合とほぼ同等となります。

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例2)自動車のフルビークル解析の場合

フルビークルモデルを用いてバネ下やコンポーネントに着目したパラメータスタディを行う場合、もっとも節点数(グリッド数、ノード数)の多い車体の詳細FEモデルをモーダルモデル化することで、フルビークルがわずか数千節点規模のモデルに縮小されます。