モーダル実験のご紹介 – エキゾーストシステム(排気系)の例

エキゾーストシステムは車体振動や車室内こもり音に影響するコンポーネントのひとつですが、エキゾーストシステムの共振周波数はアイドル起振力周波数に近接することが多く、ステアリングシステムと共に振動設計が難しいコンポーネントとなっています。エキゾーストシステムはマウントインシュレータ(防振ゴム)を介して車体に装着されるものの、インシュレータの動バネレートやロスファクタのチューニングによる振動レベルの低減は限定的であるため、基本的に重量物であるサイレンサ(Figure 1.1)などのレイアウトやその前後のチューブ径の検討などによって極力大きな振動が生じないよう設計されます。

Figure 1.1. エキゾーストシステム(排気系) の例

もっとも効果的な振動設計手法としては、Figure 1.2のようにエキゾースト本体の固有モードにおけるノーダルポイントで車体にマウントされるよう設計することです。このようにノーダルマウントされることにより車体マウント点の振動振幅が最小化されます。エキゾーストシステムの場合はハンマリングによる加振を行って数点~十数点の加速度応答を計測することで、Figure 1.2のようなノーダルポイントを把握することができます。

Figure 1.2. エキゾーストシステム(排気系) の固有モードの例

フュエルポンプの低騒音化 – 騒音計測

前回の記事でご紹介いたしました新しいブラケットに装着されたフュエルポンプを作動させ、車室内の騒音を計測いたしました。その結果、インシュレータ装着によっておよそマイナス6dB(1/2倍)の騒音低下となることがわかりました。(Figure 6.1) 体感的にも明らかに車室内ノイズㇾベルの改善を実感できましたので、長い道のりでしたが、装着した甲斐がありました。

Figure 6.1. 騒音計測結果
左:インシュレータ無し / 右:インシュレータ有り
※E.N.Software社製FFT Waveにより表示

今回はフュエルポンプにインシュレータを装着した場合の騒音低減効果を評価することが目的ではあったのですが、その過程でブラケット共振の低さを把握することができました。長期間の稼働によって機器が故障する場合、その原因がそれ自身の共振であるのか、もしくは他の振動や熱にさらされていたからなのかを簡単に切り分けられないケースは決して少なくないように見受けられます。そういった観点から、今回の一連の作業の中で共振面での対策を施せたことの意義は大きかったように思います。

これで当初の目的は達成できましたので、フュエルポンプ関連の記事はこれにて完結となります。ご購読いただきました皆様には心より感謝申し上げます。

フュエルポンプの低騒音化 – モーダル実験(シミュレーション結果の実験確認)

前回の記事でご紹介いたしました共振周波数が35.4ヘルツと予測された最終的なブラケット構造について実験確認を行いました。

Figure 5.1はフュエルポンプにインシュレータをセットし、新しいブラケットに装着したサブアッセンブリ構造です。このコンポーネントを車両に搭載し、サポートブラケットを追加してモーダル実験を行いました。

Figure 5.1. サブアッセンブリ構造 = フュエルポンプ + インシュレータ + ブラケット

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応答点(計測点)はFigure 5.2のようにモード形態が表現できるよう計9点としました。

Figure 5.2. フュエルポンプ系 / 応答点(計測点)

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計測された9点の伝達関数から固有モードを抽出した結果、Figure 5.3のようにブラケットの共振周波数は36.9ヘルツとなり、シミュレーションの35.4ヘルツに対し約4パーセント高めではありますが、概ね予測通りの結果となることがわかりました。

Figure 5.3. フューエルポンプ系 / 実験結果 / 固有モード / 36.9 [Hz] / 上下曲げ1節

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これで振動面の課題は解決できましたので、ようやくフュエルポンプを作動させることができる状態になりました。次回はフュエルポンプのインシュレータ装着による低騒音化の効果についてリポートさせていただく予定ですので、もしよろしければ改めてご訪問いただけましたら幸いです。

フュエルポンプの低騒音化 – 振動設計(構造検討と動特性の予測)

フュエルポンプ(燃料ポンプ)にインシュレータを装着した場合、ブラケットの大型化やインシュレータ追加による共振周波数の低下が予想されます。そこで、この共振周波数がどの程度低下するかをシミュレーションによって予測することとしました。具体的には、前回構築したコリレーション済みベースモデルをもとにブラケット部分を新しいブラケットモデルに差し替えてNX Nastranによる振動シミュレーション(ノーマルモード解析=固有値解析)を行いました。

Figure 4.1はベースモデルのブラケット部分を新しいブラケットモデルに差し替えたた場合のノーマルモード解析結果です。共振周波数がベースモデルの18.5ヘルツから14.6ヘルツまで低下する結果が示されました。

Figure 4.1. シミュレーション結果 / 新しいブラケット仕様 / 固有モード / 14.6 [Hz] / 上下曲げ1節

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20ヘルツ以下にはバネ下共振やエンジンシェイクが存在しているため、念のためフュエルポンプ系の共振点を20ヘルツ以上に引き上げることを前提に追加構造の検討を行うこととしました。現状構造の片持ち支持を両端支持とすべくサポートブラケットを追加した構造をモデル化して共振周波数を予測した結果、35.4ヘルツまで上昇することがわかりました。(Figure 4.2、Figure 4.3) この周波数であれば20ヘルツ以上であるだけでなく、アイドル起振力周波数からも十分に離れるため、追加したサポートブラケットの剛性および減衰要件を満たすよう具体的構造を設計・製作することとしました。

Figure 4.2. シミュレーションモデル / 新しいブラケット + サポートブラケット

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Figure 4.3. シミュレーション結果 / 新しいブラケット + サポートブラケット / 固有モード / 35.4 [Hz] / 上下曲げ1節

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次回は新しいブラケット(およびサポートブラケット)にフュエルポンプおよびインシュレータを装着し、車両に搭載した状態でのモーダル実験の結果をリポートさせていただく予定ですので、もしよろしければ改めてご訪問いただけましたら幸いです。