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固有モード計測(ハンマリング試験)における加速度センサー質量の影響(共振周波数の変化)

ハンマリング試験により固有モードを抽出する場合、はじめの一歩となるのが伝達関数の計測です。この伝達関数のピーク周波数から固有モードを抽出しますが、明瞭なモードシェイプが現れないことがあります。これはピーク周波数が計測する点(応答点)によって変化していることで生じます。応答点によってピーク周波数が異なるというのは、計測対象となる供試体の非線形性の他、加振力が大きすぎる場合や質量の大きい加速度センサー(ピックアップ)が取り付けられている場合にも生じます。加速度センサーにはさまざまなサイズのものがあり、基本的には、できる限り軽量のものが望ましいのですが、3軸センサーの質量は最小でも1グラムなため、1グラムによって周波数が変動する場合は、それよりさらに小さな質量0.2グラムのものを使用します。ただし、0.2グラムは1軸のため、全応答点の計測に時間を要します。固有モード抽出の際、ご参考にしていただけましたら幸いです。

部品結合部の減衰(構造減衰、損失係数)の影響

実測された振動をコンピュータで再現するとき、共振周波数は再現するものの周波数応答波形(伝達関数)で見ると波形の傾向が再現されないことがあります。たとえば、削りだし部品や鋳物部品など、単一部品では波形を再現するところが、複数結合すると波形が再現しない、といったケースです。このような現象は、部品結合部の減衰(構造減衰=損失係数)が波形のピーク周波数を変化させているために生じることが多いです。複数結合された系の共振周波数が実測値を再現していないということではないため、メッシュモデルではなく、その部品結合部に減衰要素を追加することで波形傾向が再現するようになることがあります。ご参考にしていただけましたら幸いです。

移転のご案内

この度、会社を移転いたしましたのでご案内させていただきます。創業以来19年間を過ごさせていただきました横浜市都筑区から横浜市中区へ移転いたしました。これまでの19年間は、2008年のリーマンショック、2011年の震災、そして2020年から2022年までのパンデミックなど、どちらかというと多くの皆様に苦難をもたらした出来事の方が多く思い出されます。そのような時代の中、会社もその度に「氷河期」を経験してまいりましたが、今回の移転は、今後またやってくるかもしれない氷河期に向けた備えとしての業務効率化を目的として実施いたしました。これからもより一層ご用命いただきやすいワンストップサービスを目指し、効率的な仕事ができるよう精進してまいりますので、何卒、よろしくお願い申し上げます。

バー要素(梁要素)のご紹介

バー要素が使われる箇所

近年では使用頻度が少なくなってきているバー要素ですが、押し出し型材を組み合わせて構成される大型構造物では、まだまだバー要素が用いられています。部材結合部の局所的な剛性を再現する上ではソリッド要素でモデル化する方が有利ではありますが、節点数が膨大となって計算時間がかかってしまいます。バー要素は計算機の性能が今ほど高くなかった30年ほど前までは短時間で結果を出せるという点で様々な構造モデルで使用されていました。

バー要素のその他のメリット

断面積、断面2次モーメント、およびねじり定数(断面2次極モーメント)で構造を表現できるバー要素は、簡単な断面形状であれば暗算でも曲げ剛性やねじり剛性を算出できます。このような暗算は解析結果の妥当性をチェックする上でとても役立ちます。「断面2次モーメントが何パーセント変化したから共振周波数は何パーセント程度変化するはず」といったようにチェックすることができます。これは共振周波数を実測する場面では、計測される周波数がおおよそ何ヘルツくらいになりそうかを予測することができるため、実験結果の妥当性チェックにも役立ちます。